蜜愛シンドローム ~ Trap of Masato ~
その日の夜。
家に帰った絢乃は、事情を慧に説明した。
慧は一瞬ぽかんと絢乃を見た後、・・・絶叫した。
「はあ!? 婚約者になった!!?」
「・・・言っとくけど、『仮』だから。本物の婚約者が決まるまでのツナギだから」
と絢乃が言っても、慧の耳には届いていない。
慧はぶるぶるっと首を振った後、ガシッと絢乃の両肩を掴んだ。
「なにそれ!? ありえないよ、ありえなさすぎだよ、お前!!!」
「・・・イヤ、ありえないことしちゃったのはむしろ私なので・・・」
「ダメだよ、おれは認めない! これから北條さんに会いに行くっ」
慧は蒼白な顔でソファーから立ち上がろうとする。
絢乃はその腕を慌ててガシッと掴んだ。
「ちょっと待ってよ、落ち着いてよ、慧兄!?」
「これが落ち着いていられるかッ!?」
いつにない慧の激昂ぶりに絢乃は驚きながらも、必死で慧の腕を掴んだ。
ここで兄を野放しにしたら大変なことになってしまう。
絢乃は慧の腕を掴みながら、必死で言い募った。