蜜愛シンドローム ~ Trap of Masato ~




電話の向こうで、しばしの沈黙が広がる。

絢乃も春美に電話を掛けたはいいが、何を話せばいいのかわからない。

やがて春美は電話向こうでひとつ息をついた後、重い口調で話し始めた。


『北條さんはあんたに何も言わずに辞めるつもりだったみたいだけど、やっぱ私としては、ちゃんと話した方がいいと思うんだよね・・・』

「・・・?」

『あんたも、気になるなら連絡取ってみたら? ・・・あぁでも、北條さんは今日、帝国ホテルに行くって言ってた。14:00とか言ってたかな。ま、月曜でもいいとは思うけどね?』


春美の言葉に、絢乃はぐっと唇を噛みしめた。

雅人の連絡先は、会社携帯の方は知っているが、個人携帯の方は知らない。

絢乃と春美は二言三言会話を交わし、電話を切った。


今日は休日だし、ましてや外出中であれば、会社携帯に掛けても繋がらないだろう。

それに春美が言うように、月曜に会社に行けば雅人に会える。

けれど・・・。


なぜか、居てもたってもいられない。

雅人に会って、直接聞きたい。


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