蜜愛シンドローム ~ Trap of Masato ~




「私、北條さんにはいろいろ迷惑かけてきたのに、こんなことになっちゃって・・・。だからせめて、今回の件については、ちゃんと償いをしたいのっ」

「・・・っ」

「北條さんの未来を、私が潰すわけにいかないの! だから私・・・・っ」


───と叫ぶように言った絢乃の腕の中で。

ふっと慧の腕から力が抜けた。

ん? と思う絢乃を振り返り、慧はじっとその瞳を見つめる。

・・・その美しい瞳によぎる、切なげな光。

絢乃はその瞳に思わず息を飲んだ。


「・・・そう。お前が、そうしたいんだね?」

「・・・慧兄?」

「お前が望むなら・・・おれは・・・」


慧は呟くように言い、絢乃に背を向けた。

・・・絢乃を拒絶するかのような、その背中。

慧はゆっくりと立ち上がり、自室の方へと歩いていく。

慧の表情は見えないが、その背には深い哀しみの影が漂っている。

・・・慧を、傷つけてしまった・・・。

絢乃は慧の背中を見つめながら、ぐっと唇を噛みしめた・・・・。


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