蜜愛シンドローム ~ Trap of Masato ~
4.Trap of ...
<side.雅人>
夜半過ぎ。
雅人は自宅の離れにある自室のソファーに寄りかかり、窓の外に浮かぶ月をじっと見つめていた。
十五夜月、十六夜月と、月がゆっくりと満ちていくように・・・
雅人の心の中にも、淡く純粋な想いが溢れ出す。
それは清冽な月の光のように雅人の心を満たし、しだいに熱を帯びていく。
・・・胸の中に燻る熱。
雅人は息をつき、眼鏡を外してサイドテーブルに置いた。
───今日。
まさか絢乃が帝国ホテルに現れるとは思ってもみなかった。
縁談に臨むつもりで帝国ホテルに入った雅人だったが、思いもかけない邂逅に頭の中は一瞬で真っ白になった。
・・・どうして、絢乃がここにいるのか・・・。
絢乃自身も戸惑っていた様子だったが、自分に会いに来たというのは確からしい。
と、分かった瞬間。
雅人の胸に、焼けるような想いが突き上がってきた。