蜜愛シンドローム ~ Trap of Masato ~
雅人は呟き、そっと目を閉じた。
正直、絢乃でなくても婚約者になることを望む女は山のようにいる。
けれど雅人は、絢乃にあえて『婚約者』の役を任せた。
そして絢乃は、償いの気持ちからそれを受け入れた。
───絢乃は責任感が強く、真面目だ。
ああ言えば絢乃が受け入れるだろう、と雅人は分かった上で絢乃に婚約者になるよう言った。
絢乃はもちろん、雅人の真意など───わざとそうなるように仕向けたことなど、知る由もない。
───罠だと知った時・・・
絢乃は、自分をどう思うだろうか。
けれどもう、雅人に迷いはない。
向かうべき結末はひとつしかない。
とりあえず第一段階はクリアというところだろうか。
あとは外堀を着実に埋める必要がある。
雅人はくすりと笑い、ゆっくりとソファーから立ち上がった。