蜜愛シンドローム ~ Trap of Masato ~
その他にも、敷地内には建物がいくつか建っており、門からはその全容は見えない。
絢乃は震える手でインターホンを押した。
『はい、どちら様でしょうか?』
「本日13時に雅人さんと約束しております、秋月です」
『お待ちしておりました。どうぞお入りくださいませ』
インターホンの声とともに、カシャンと門の鍵が外れる。
さすが豪邸なだけはあり、セキュリティもしっかりしているらしい。
絢乃は門をくぐり、中庭の方へと歩いて行った。
その時。
「こっちだ、絢乃」
雅人の声に、絢乃ははっと足を止めた。
見ると、離れの前に雅人が立っている。
黒のスラックスにストライプのワイシャツという格好だが、会社ではないせいか髪は固めず自然な感じで流している。
その少しルーズな感じに大人の男の色気を感じ、絢乃は思わずドキッとしてしまった。
・・・なんというか、雅人は髪型を変えると雰囲気がかなり変わる。
会社では見たことのない姿を、今見ていると思うとなぜか胸がじわりと熱くなる。
けれど・・・。
・・・今、名前で呼ばれたような・・・。
雅人は怪訝な顔をする絢乃を見下ろし、少し笑った。