蜜愛シンドローム ~ Trap of Masato ~



その他にも、敷地内には建物がいくつか建っており、門からはその全容は見えない。

絢乃は震える手でインターホンを押した。


『はい、どちら様でしょうか?』

「本日13時に雅人さんと約束しております、秋月です」

『お待ちしておりました。どうぞお入りくださいませ』


インターホンの声とともに、カシャンと門の鍵が外れる。

さすが豪邸なだけはあり、セキュリティもしっかりしているらしい。

絢乃は門をくぐり、中庭の方へと歩いて行った。

その時。


「こっちだ、絢乃」


雅人の声に、絢乃ははっと足を止めた。

見ると、離れの前に雅人が立っている。

黒のスラックスにストライプのワイシャツという格好だが、会社ではないせいか髪は固めず自然な感じで流している。

その少しルーズな感じに大人の男の色気を感じ、絢乃は思わずドキッとしてしまった。

・・・なんというか、雅人は髪型を変えると雰囲気がかなり変わる。

会社では見たことのない姿を、今見ていると思うとなぜか胸がじわりと熱くなる。

けれど・・・。

・・・今、名前で呼ばれたような・・・。

雅人は怪訝な顔をする絢乃を見下ろし、少し笑った。

< 26 / 175 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop