蜜愛シンドローム ~ Trap of Masato ~
絢乃は手早くチュニックとジーンズに着替え、財布と携帯をバッグに入れた。
そのまま洗面所に向かい、軽く身支度をして玄関の方へと歩いていく。
「・・・あれ、アヤ、どこか出かけるの?」
キッチンにいた慧が首を傾げて絢乃を見る。
慧は今朝には既に熱が下がっていたらしく、今日は朝から普通に起きていた。
念のため病院に行こうか? と聞いてはみたものの、病院嫌いの慧はそれを断固として拒否した。
慧は絢乃に対しては例えかすり傷でも病院に連れて行こうとするが、慧自身はかなりの病院嫌いで、相当具合が悪い時でないと行こうとしない。
「うん。ちょっと、行ってくるね」
「どこに行くの?」
「帝国ホテル。夕方には戻るから」
絢乃は言い、靴を履いて玄関のドアを出た。
その背を、慧が怪訝そうな目で見つめていた・・・。