蜜愛シンドローム ~ Trap of Masato ~
19:00。
絢乃はがくりと肩を落とし、ペンを握りしめた。
あれからひたすら資料の内容を頭に叩き込んだのだが、これまで馴染のない単語やら言葉ばかりなので一向に捗らない。
「───北條家の起源は源平合戦にまで遡る。この時、何の戦いで北條忠近は功績を遺したか?」
「・・・お、桶狭間?」
「言っておくが北條忠近は普通の人間だ。400年も生きてはいない」
「・・・」
絢乃ははぁぁと項垂れた。
・・・まるでわからない。
これで小テストは3回目なのだが、イマイチ結果は芳しくない。
「明治時代。北條財閥は政治団体に働き掛け、労働者の権利を高める目的でグループ出身の者を政界に送り込み、政党を結成した。その政党の名前は?」
「・・・東方義和団?」
「残念ながら、北條グループは秘密結社までは手掛けていない」
「・・・」
絢乃はがくっと頭を垂れた。
小テストの出来は、一言でいうと───壊滅的だ。
この分だといつ解放されるかわからない。
意気消沈する絢乃の隣で、雅人はひとつ息をつき、顔を上げた。