蜜愛シンドローム ~ Trap of Masato ~
組合旅行の幹事の時ですら、あそこまでコキ使われたのだ。
部下になどなったらどうなるかわからない。
「わかった。・・・では俺も、少し考えておく」
雅人はいつもの冷静な口調で言う。
・・・考えておく、って・・・。
絢乃はぽかんと雅人を見上げた。
雅人はその目を細め、少し笑って口を開く。
「さ、行くぞ」
「・・・行くって、どこにですか?」
「夕食だ。俺の婚約者になったからには、テーブルマナーも完璧に覚えてもらう必要がある」
「・・・」
どうやら今日の勉強はこれで終わりというわけではなかったらしい。
・・・しかし、これは想像以上に大変だ。
仮の婚約者とはいえ、こんな調子で務まるのだろうか・・・。
絢乃はふぅと息をつき、雅人の後に続いて部屋を出た。