蜜愛シンドローム ~ Trap of Masato ~
ふいに後ろから、低いバリトンの声がした。
「・・・加納。絢乃を離せ」
───耳に心地よい、その声。
いつもの冷静な、落ち着いた声。
振り返ると、雅人が二人の前へと歩み寄ってくるのが見えた。
・・・その目によぎる、紛れもない怒り。
息を飲む絢乃を、雅人は力づくで卓海の手から引き離した。
「・・・どうしたんですか。北條さんにしては珍しいですね」
と、驚いた表情で言った卓海に。
雅人はすっと目を細め、険しい顔で淡々と告げた。
「婚約者が他の男に触れられるのを黙って見ていられるほど、俺は寛容ではない」
「・・・っ!?」