蜜愛シンドローム ~ Trap of Masato ~
11:00。
絢乃は駅への道を歩きながら、携帯を開いた。
携帯には、卓海からのメールが入っている。
「・・・」
絢乃はしばらくメールを見つめた後、『今日は行けない』旨のメールを手早く打った。
卓海が何の目的で宮崎平に来いと言っているのかはわからないが・・・
今卓海に会っても、何をどう話せばいいのかわからない。
それに、また慧とのことを持ち出されたら、平静でいられる自信がない。
・・・あの時の卓海の表情、そして態度・・・
いつもと違っていたのが少し気にはなるが、何しろ相手は鬼だ。
人間である絢乃には、想像もつかない思考回路で生きている。
それを理解しようと思ったら相当の覚悟が必要だ。
断ったら月曜に酷い目に遭いそうな気もしなくもないが、さすがの鬼も会社でめったなことはしないだろう。
───多分。
絢乃はパタンと携帯を閉じ、早足で歩き出した。