蜜愛シンドローム ~ Trap of Masato ~
会場に向かう車の中で。
絢乃は膝の上に置いた手をぐっと握りしめた。
・・・これから何があるのか、全く想像がつかない。
政財界のパーティだと言ってはいたが・・・。
ちなみに場所は汐留らしい。
「そういえば、絢乃。データベースの資料の作成は進んでいるか?」
隣に座った雅人が、絢乃の方を向いて口を開く。
雅人の頭の中にはどんな時でも仕事のことがあるらしい。
やはり軍曹だ、と思いながら絢乃は少し笑って言った。
「はい。月曜の午後には提出できると思います」
「そうか。・・・しかしまだ、この時期で良かったかもしれんな。年度末の繁忙期に重なったら延々と徹夜だったかもしれん」
「・・・」
絢乃はそれを想像し、ハハと乾いた笑いを返した。
・・・その場合は恐らく、デスマーチになるだろう。
考えただけで恐ろしい。