蜜愛シンドローム ~ Trap of Masato ~
「おや、雅人君。久しぶりだね」
太く低い声とともに、二人の前に壮年の男性が姿を現した。
背は雅人より頭一つ分ほど低く、上品な黒いスーツを身に着けている。
その顔を見、絢乃は眉根を寄せた。
・・・なんとなく、雅人に似ているような・・・。
「こちらは俺の叔父で、北條建機の社長をしている」
「・・・北條史人だ、よろしく」
史人は絢乃にすっと手を差し出した。
絢乃も慌てて自己紹介し、その手を握りしめた。
───その瞬間。
史人の瞳によぎる鋭い影に、絢乃は内心で首を傾げた。
ん? と思う絢乃の前で、史人は雅人にからかうように言う。
「・・・こんなに可愛い婚約者がいたとはな。どうりで愛美を袖にするわけだ」
「叔父上・・・」
「あぁ、冗談だ。二人とも、パーティを楽しみたまえ」