蜜愛シンドローム ~ Trap of Masato ~
控室に入った絢乃は、ふぅと窓際のソファーに腰を下ろした。
控室は披露宴会場から少し奥に入ったところにあり、どうやら北條家専用らしい。
北條財閥については絢乃も雑誌やテレビで何度か見聞きしたことはあったが、相当大きな企業グループのようだ。
絢乃がこれまでに生きてきた世界とは、全く違う。
「・・・っ・・・」
そう思うと、なぜか胸が痛い。
自分が婚約者の器でないことは絢乃もわかっている。
恐らく、雅人の正式な婚約者になる人は、それなりの家柄の人でないと釣り合わないだろう。
雅人と一緒の時間を重ねれば重ねるほど、それが身に染みてわかってくる。
雅人は控室に絢乃を入れたあと、『ちょっと待っていろ』と言って出て行った。
どうやら飲み物を持ってきてくれるつもりらしい。
雅人は仕事面では厳しいが、こういうところはとても優しい。
育ちのせいかもしれないが・・・。