蜜愛シンドローム ~ Trap of Masato ~




立ち尽くす絢乃の視線の先で、雅人は颯爽とロビーラウンジの方へと歩いていく。

その後ろには40代くらいのスーツ姿の男性が続いている。


「・・・金田。先方から何か連絡はあったか?」

「はい。予定通り、14:00にいらっしゃるとのことです」


どうやら男性は雅人の秘書のようだ。

二人の姿を見、絢乃はなぜか心の隅が痛くなるのを感じた。

春美が言っていたことは、本当だったらしい。

───雅人が財閥の御曹司である、ということ。

今にして思えば、台場で行ったあの店も、そして新宿で行ったあの店も・・・

ただの『親戚の店』にしては格調高かった気もする。

そして雅人が普段身に着けているものも、上質な感じのものが多い。


絢乃はバッグの取っ手をぎゅっと握りしめた。

せめてもう少し、ちゃんとした格好をしてくればよかった。

雅人の前に、こんな格好で立つわけにはいかない。


聞くのは、月曜にしよう・・・。

絢乃は俯き、踵を返そうとした。

そのとき。



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