蜜愛シンドローム ~ Trap of Masato ~
4.つのる想い
<side.雅人>
絢乃を控室に案内した後。
雅人は会場に戻り、ドリンクコーナーで二人分のコーヒーを頼んだ。
ホテルの係員が、コーヒーを淹れながら雅人に言う。
「控室までお持ちいたしましょうか?」
「・・・いや、いい」
雅人はコーヒーが載ったトレーを持ち上げ、会場を後にした。
廊下を歩きながら、絢乃の姿を思い出す。
盛装をした絢乃は、雅人の想像以上に美しかった。
繊細な長い睫毛も、丸みを帯びた頬も、桜色の唇も・・・
少女のあどけなさと大人の女の色気を漂わせたその姿は、思わず魅入ってしまいそうなほど魅力的だ。
会社ではパンツスーツにひっつめ髪という全く色気のない格好だが、今にして思えば、それでも十分可愛かった気がする。
───などと思ってしまうあたり、自分は相当やられているのかもしれない。