蜜愛シンドローム ~ Trap of Masato ~
「・・・秋月?」
耳に響く、低いバリトンの声。
絢乃はびくっと背筋を固まらせた。
凍りついたように立ち尽くす絢乃を、雅人が目を見開いてじっと見つめる。
眼鏡の奥の涼やかな瞳によぎる、驚愕の色。
「・・・お前、なぜ、ここに?」
雅人はしばし絢乃を見つめた後、スタスタと大股で絢乃の前へと歩み寄った。
───信じられない、とでも言いたげなその視線。
絢乃は一瞬でパニックになり、あたふたしながら雅人を見上げた。
いろいろ聞きたいことがあったはずなのに、なぜか全て頭から吹っ飛んでしまっている。
「どうしてここにいる? 説明しろ」
「・・・・っ」
なぜここに来てしまったのかは、自分でもよくわからない。
月曜でもいいはずなのに・・・。
自分自身の行動が、自分でもよくわからない。
パニックになった絢乃は、思わず、全く関係ないことを口走ってしまった。
「・・・あのっ、物流システムが・・・・っ」
「・・・?」
「物流システムが、その・・・っ」