蜜愛シンドローム ~ Trap of Masato ~
三章

1.共に歩く者




12月上旬の金曜。

絢乃は第一開発課の居室で、データベースの資料をまとめていた。

雅人の一週間後の退職を前に、室内にはさめざめとした、沈鬱な空気が漂っている。


「・・・」


絢乃の組織上の所属は運用課ではあるが、この第一の様子を見ていると、大丈夫だろうかと思わずにいられない。

さすがの卓海も、この葬式のような集団を統率していくのは一筋縄ではいかないだろう。

───むしろ、あの本性を出せば逆に付いてきそうな気もしなくもないが。


絢乃はふと、奥の机に座っている雅人を見た。

雅人はいつもの落ち着いた表情で、何やら資料を眺めている。

・・・雅人があの机にいる姿を見るのも、あと一週間・・・。

そう思うと、絢乃の胸に痛みが広がる。


胸に広がる、痛み・・・

切ない疼きを伴った、この痛み。

その正体に、絢乃はおぼろげながら気付いていた。


・・・多分、自分は・・・

雅人のことを、好きになっているのだろう。


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