蜜愛シンドローム ~ Trap of Masato ~
絢乃は雅人とともに、母屋の二階にある書斎へと向かった。
・・・この屋敷で雅人の家族に会うのは初めてだ。
さすがに緊張する。
ぎこちない足取りで書斎に入ると、書斎机のところに座っていた老人がゆっくりと顔を上げた。
老人は白髪で背はさほど高くはないが、その威厳に満ちた雰囲気のせいか見た目以上に大きく見える。
───北條グループの会長。
例えこの老人が公園で日向ぼっこをしていたとしても、只者ではないというのは一目でわかるだろう。
「・・・ほう、その娘か、雅人?」
武人は目尻の皺を細めて微笑する。
・・・笑ってはいるが、絢乃を見るその眼光は鋭い。
内心で息を飲んだ絢乃の隣で、雅人が冷静な口調で言う。
「紹介が遅れまして申し訳ありません」
「・・・いつ来るかと待っておったのだが。とりあえず役員会には間に合った。わしも一安心だ」