蜜愛シンドローム ~ Trap of Masato ~
「だからこそ、お前の傍には心から信頼できる者が居てほしい。これは会長というよりは、祖父としての老婆心だがな?」
「・・・っ」
「わしは反対はしない。あとはお前次第だ、雅人」
武人は言い、再び窓の外に視線を戻した。
・・・その目は遠くの空を眺めている。
祖父がこんな表情をするのは、大抵亡くなった祖母を思い出している時だ。
『お前がこれから歩く道で真に必要となるのは、心から信頼できる人間だ』
祖父が、どんな気持ちでこの言葉を言ったのか・・・。
───それは何十年も孤独な道を歩き続けてきた祖父にしかわからないだろう。
だからこそ、言葉の重みが雅人の胸に重く圧し掛かる。
雅人は祖父に一礼し、武人の前を辞した。