蜜愛シンドローム ~ Trap of Masato ~
土曜の午後。
絢乃は雅人に言われたとおり、いつもの時間に北條家の門をくぐった。
中庭に入るなり、母屋の玄関から家政婦たちが姿を見せる。
「お待ちしておりました、絢乃さま! さ、こちらへどうぞ」
「・・・え?」
思わず唖然とした絢乃だったが、あれよあれよという間に母屋に引きずり込まれ、例の小部屋に入れられ、鏡台の前に座らされる。
ポカンとする絢乃の前で、家政婦たちはクローゼットからドレスやら小物やらを取り出し始めた。
「えっ、・・・あの・・・?」
「今日はうんとお綺麗にして差し上げなければ! 腕が鳴りますわね~」
家政婦達は問答無用と言った感じで絢乃に化粧を施し始める。
髪は後ろで結い上げられ、薄黄のシフォンのドレスを着せられる。
・・・パーティだろうか。
しかし雅人の姿が見えないのが、なんとなく気になる。