蜜愛シンドローム ~ Trap of Masato ~
雅人の手が絢乃の腕を掴む。
雅人はそのまま入口を出、タクシーホールの方へと向かう。
絢乃は雅人に引きずられながら、今の雅人の言葉に目を見開いていた。
・・・縁談取止め、って・・・
雅人がなぜ帝国ホテルに来たのか、絢乃は知らなかった。
けれど雅人の今の言葉から察するに・・・。
───マズイ。
それは、マズい。
絢乃は慌てて雅人を見上げ、足を止めようとした。
しかし雅人は強引に絢乃の手を引いて歩いていく。
「あのっ、北條さん・・・っ」
絢乃は叫んだが、雅人は問答無用で絢乃をタクシーの後部座席に放り込む。
驚き、愕然とする絢乃の横で、雅人が素早く運転手に指示を出す。
「田町に向かってくれ」
「はい、畏まりました~」
タクシーは滑るようにロータリーを出て行く。
絢乃は真っ青な顔で、膝の上で手を拳に握りしめた。
・・・どうしよう。
とブルブル震える絢乃の横で、雅人がひとつ息をつく。