蜜愛シンドローム ~ Trap of Masato ~




驚く絢乃の前で、壇上の司会者らしき人がマイクを手にする。

雅人はすっと絢乃の背に手を回し、壇上へとエスコートした。

絢乃は呆然としたまま、雅人に導かれるまま壇上に上がった。


「・・・それでは、婚約記念品の交換に入ります」


司会者の声とともに、黒いビロードのトレーを持った女性が二人の横に立つ。

トレーには、繊細な輝きを放つシルバーのタイピンと、ラウンドカットダイヤの指輪が置かれている。

・・・これは・・・。

頭の中に靄がかかったように、何も考えることができない。

雅人はそんな絢乃の左手をそっと取り、優雅な仕草で指輪を薬指に嵌める。

・・・その少し骨ばった、細い指先。

左手の薬指に嵌められたダイヤの指輪を、絢乃は呆然と見つめていた・・・・。



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