蜜愛シンドローム ~ Trap of Masato ~
「俺は最初から本気だった。・・・お前が帝国ホテルに来た時から、な」
「え・・・っ」
「あの日、俺はお前に『仮の婚約者になれ』と言ったが、俺は『仮』で済ませる気は毛頭なかった」
雅人の言葉は衝撃となって絢乃の胸を直撃した。
・・・つまり。
「最初から、そのつもりで・・・?」
「ああ、そうだ。・・・俺はお前を騙した」
雅人は自嘲するように少し笑い、絢乃を見た。
・・・その目によぎる、切ない熱情。
絢乃は吸い込まれるように雅人を見つめていた。
「・・・そもそも、あの時障害が出ていないことはわかっていた。だが俺はお前を連れて帝国ホテルを出た。だからあの縁談を壊したのは俺自身だ」
「・・・っ、北條さん・・・」
「だがそれをお前のせいだと思い込ませれば、お前は俺の婚約者になることを承諾するだろうと思った。・・・そして俺の読み通り、お前は承諾した」