蜜愛シンドローム ~ Trap of Takumi ~
言い、卓海は小皿を取り上げて慧の部屋に入った。
───そして数秒後。
慧の部屋から、何やら言い争う声が聞こえてきた。
「・・・なんで・・・お前が・・・っ」
「いいから食え! 口に突っ込むぞ!?」
「毒でも入ってんじゃないのか、それ・・・っ」
「殺人エビチリでオレを殺しかけたお前が言うことか!?」
───なぜ食事するだけなのに怒声がするのか。
絢乃は蒼白になったが、下手に入って巻き込まれるのはイヤだ。
やがてしばしの沈黙の後、卓海がキッチンへと戻ってきた。
その手には空になった小皿がある。
「・・・一体なんなんだ、あいつ」
「・・・」
───同じことを私も兄もアナタに対して常日頃思ってますが。
とはさすがに言えず、絢乃はお茶を無言で卓海の前にトンと置いた。
それを見、卓海がほぅと言ったように眉を上げる。