蜜愛シンドローム ~ Trap of Takumi ~
心の奥底で、得体のしれない恐怖が湧き上がる。
絢乃がいない日々。
・・・何の刺激もない、死ぬほど退屈な日々。
絢乃との日々を知る前は、人生などこんなものかと思っていた。
適当に楽しみ、適当に仕事をし、適当に生きていく。
けれど絢乃と過ごす時間を知ってから、そんなものが人生ではないと、心のどこかで気付いていた。
しかし、それに向き合うのが怖かった。
向き合ってしまったら、逃げられなくなるからだ。
けれどもう・・・
向き合わないわけにいかない。
卓海はエレベーターホールに入り、ボタンを押そうとした。
その時。
「・・・ようやく帰ってきたわね」