蜜愛シンドローム ~ Trap of Takumi ~




柱の陰から声がし、卓海は振り返った。

見ると。

コート姿の千尋がつかつかと歩み寄ってくる。

その手には大きな紙袋を持っている。


「お前、どうしてここに?」

「ちょっと友人とフランスに行ってきたから、お土産を渡しに来たの。といっても卓兄にじゃなくって、絢乃さんにですけどね」


言いながら、千尋は紙袋を卓海の手に押し付ける。

卓海は眉を顰めて紙袋を見つめた。


「・・・なんだ、これ?」

「フランスのお菓子と、絢乃さんに似合いそうな髪飾りですわ」

「・・・」


よりによって髪飾りとは・・・。

卓海は思わず剣呑な目で紙袋を見てしまった。

そんな兄の態度を見た千尋が、驚いたような顔をする。


「あら? ・・・ひょっとして卓兄、まだ絢乃さんと付き合ってないんですの?」


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