蜜愛シンドローム ~ Trap of Takumi ~



千尋はため息交じりに言い、キッと卓海を見た。

・・・卓海と同じ、茶色がかった二重の瞳。

その目がじっと正面から卓海を見据えるのを、卓海は無言で見つめていた。


「わかってないようですから言いますわ。・・・卓兄の破滅的かつ自己中心的な性格であれば、自身で思い至らないのは無理もないことかもしれませんけど・・・」

「・・・?」

「卓兄が絢乃さんに向けている感情は、一般的に『恋』と呼ぶものですわ。・・・もっとも卓兄の場合は歪みまくっているので、一見、そうは見えないのでしょうけど」

「・・・っ!」

「他人から言われないとわからないって・・・さすがに心配になりますわね。絢乃さんがとばっちりを受けてなければいいんですけど・・・」


千尋は卓海を上目遣いで見、心配そうに言う。

卓海は千尋の言葉を衝撃とともに受け止めていた。



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