蜜愛シンドローム ~ Trap of Takumi ~




───卓海は、これまで女に恋したことはない。

女嫌いの自分が、女になど恋するはずがないと・・・無意識のうちに、そう思っていた。

しかし・・・。

卓海はぐっと手を拳に握りしめた。


こんなものが・・・・

こんなに醜い、気が狂いそうなほどの執着が、恋だと言うのか?


───自分でも目を背けたくなるほどに醜い、切ないまでの執着。


けれど・・・

心の奥底では、わかっていたような気もする。

絢乃に向けるこの感情は、もはや『ただの道具』に向けるものではない。

卓海の心の中では、絢乃はとっくに『ただの道具』ではなくなっていた。


呆然とする卓海を、千尋は心配そうに見上げている。

千尋ははぁと息をつき、口を開いた。


< 104 / 190 >

この作品をシェア

pagetop