蜜愛シンドローム ~ Trap of Takumi ~




───そう思った瞬間。

胸の奥から突き上がる想いが、卓海の心の中の何かを、一気に振り切った。

・・・それは、理性だったのか、それとも良心か・・・

卓海はその目に昏い光を浮かべ、ぐっと唇を噛みしめた。


───もう、壊すしかない・・・。


一度胸に湧き上がったその想いは、凄まじい勢いで卓海の胸に広がっていく。

絢乃を手に入れられないのなら・・・

絢乃が他の男のものになるのを見るくらいなら・・・・


完膚なきまでに、壊し尽くすしかない。


・・・もう、誰にどう思われようと・・・

絢乃に自分がどう思われようと・・・構わない。


昏い熱情が卓海の心を焼いていく。

卓海はその痛みに頬を歪ませ、その完璧な形の唇にうっすらと黒い笑みを浮かべた・・・。


< 109 / 190 >

この作品をシェア

pagetop