蜜愛シンドローム ~ Trap of Takumi ~
絢乃はとっさにペットボトルを助手席のドアポケットに置いた。
しかしその間も、頭がクラクラしてくる。
そしてしだいに、強烈な眠気が絢乃を襲う。
・・・一体、何が・・・
この眠気は尋常ではない。
絢乃は、卓海が自分の顔をじっと覗き込んでいることに気が付いた。
・・・その端正な顔に浮かんだ、狂気じみた黒い笑顔。
ぼんやりと見つめる絢乃の視線の先で、卓海はその桜色の唇をゆっくりと動かし、囁いた。
「本当に、お前は甘いな。───ここまで無防備だと、罠にかけるのも躊躇っちまう」
「・・・?」
「だがな、絢乃。・・・残念だったな、もう逃げられねぇよ?」
甘く切ない、テノールの声。
食い入るように絢乃を見つめる、切なげな二重の瞳。
───罠・・・
それは、どういうことなのだろうか・・・。
卓海の言葉の意味を考える余裕もなく・・・。
絢乃の意識は、闇へと吸い込まれていった・・・。