蜜愛シンドローム ~ Trap of Takumi ~
耳に吹き込まれた囁きに、絢乃は目を見開いた。
とっさに辺りを見回した絢乃の目に映ったのは、まるで見覚えのない部屋だった。
そして、自分が今居るのは・・・ベッドの上だ。
自分は仰向けにベッドの上に横たわり、卓海はベッドの端に腰かけて絢乃の顔を覗き込んでいる。
突然のことに硬直する絢乃に、卓海は至近距離でくすりと笑った。
「お前、ここに来るのは初めてだったな?」
「・・・で、でも、どうして・・・?」
「どうして、って。道具をどうしようと、オレの勝手だろ?」
卓海はくすりと笑い、横から絢乃の顔を覗き込んだ。
・・・その、狂気の影が漂う黒い微笑み。
絢乃はその笑みに、胸がゾッとするのを感じた。
───この笑みは、尋常ではない。
そして、いま自分が置かれている状況も、尋常ではない。
絢乃はとっさに後ずさろうとした。
が、その肩を卓海の手が素早く押さえる。