蜜愛シンドローム ~ Trap of Takumi ~



───きっと、卓海が壊したがっているのは、絢乃ではないのだろう。

卓海が壊したがっているのは、卓海自身なのか・・・

それとも、歪んでしまった二人の関係なのか・・・。


卓海は昏い、けれど愛しげな瞳で絢乃を見つめる。

・・・その瞳から伝わる、強く深い愛情。

絢乃はその瞳に吸い込まれるように、じっと卓海を見つめた。


・・・きっと・・・

このままいくと、絢乃ではなく、卓海の心が壊れてしまう。


───なぜか、そんな気がする。


自分の体が壊れることより・・・

その方が遥かに恐ろしい。

絢乃は口を開き、震える声で言った。


「加納さん。・・・お願いです、もうやめてください」

「・・・今更何言ってる。まだ逃げようってか?」

「違います、・・・これ以上壊そうとしたら、加納さんが・・・っ」


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