蜜愛シンドローム ~ Trap of Takumi ~



絢乃は戦慄きながら、コクリと頷いた。

───鬼は健在だ。

けれど、なんというか・・・卓海は案外、独占欲が強いのかもしれない。

考えてみれば、道具であったときから、この鬼は絢乃にいろいろ要求してきた。

しかし、そう考えると・・・。

『卓海のものになる』と言ってしまった今、これから一体何を要求されるか・・・。

想像すると背筋が寒くなる。

───もう、絢乃に逃げる術はない。

退路は完璧に断たれてしまった。


・・・けれど。

それを幸せだと思っている自分がいる。

いつの間に、自分は卓海をこんなに好きになっていたのか・・・。

自分でもわからない。

けれど卓海が寄せてくれる想いを、愛情を、心から嬉しいと思う自分がいる。


卓海の手が強引に絢乃の手を掴む。

絢乃は卓海に手を引かれ、駐車場へと戻っていった。


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