蜜愛シンドローム ~ Trap of Takumi ~



その日の夜。

卓海の予想通り、慧が殴り込みにやってきた。

慧を交え、三人は卓海のマンションで夕食を取ることにした。

慧はひとしきり卓海を罵倒した後、はぁぁぁと切なげなため息をつく。


「・・・いくら何でも、突然すぎるよ。アヤが突然いなくなるなんて・・・」

「ごめんね、慧兄・・・」

「アヤ、戻りたくなったらいつでも戻ってきていいからね? その時には、おれが責任をもってこの悪辣な鬼を退治してあげるから」

「・・・お前な。さらっとロクでもねぇこと言うんじゃねぇよ」


卓海はビールのグラスを片手にため息をつく。

ちなみに今日の夕飯は石狩鍋だ。

絢乃は鮭をつつきながら、卓海をちらりと見た。

・・・黒いシャツに黒いジーンズというラフな格好だが、やはり格好いい。

と思ってしまう自分は、やはりこの鬼に相当脳を侵食されているらしい。


「・・・ちょっと、アヤ。ご飯を食べるときはよそ見しないこと」

「・・・あ、うん」


と言った絢乃の横で、卓海がクッと笑う。


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