蜜愛シンドローム ~ Trap of Takumi ~
周りからの視線でビクつく絢乃に、卓海はにっこりと笑いかける。
・・・その、優美で鮮やかな微笑み。
これで本性が鬼だとは、誰も信じないだろう。
「絢乃ちゃん。RFPの資料はどう?」
「・・・あ、はい。予定通り、今日の夕方にはサーバにUPできると思います」
「そう。何かあったらオレに遠慮なく聞くんだよ? いいね?」
卓海は目を細めて微笑う。
・・・その美しい瞳から垂れ流される色艶。
その会社らしからぬ、あまりの優艶さに思わずヒィと背筋を仰け反らせたとき。
二人の横を、女子社員の一人が通りかかった。
彼女はちらちらと二人の顔を見比べ、口を開く。
「この頃、毎日一緒にご飯食べてますよね~。何かあったんですか?」
彼女の口調は軽いが、眼差しは真剣だ。
・・・特に絢乃に向けられる視線は。
うっ、と背筋を固まらせた絢乃の前で、卓海はにっこりと笑う。