蜜愛シンドローム ~ Trap of Takumi ~
「何しろ急なことだったので、後任の調整がつかなくてな。人事部に掛け合ってはいるんだが・・・」
「・・・」
「当面、加納に各課の面倒を見てもらう。各課員は加納の指示に従うこと。いいな」
会議室はさらにシーンとなった。
皆の視線の先で、卓海はいつもの爽やかで優雅な笑みを浮かべ、課員達の顔を眺めている。
───いつもと全く変わらない、ネコ被りの余裕の笑顔。
絢乃も何も言えず、卓海を凝視していた。
・・・ということは。
自分の直属の上司が、卓海になるということだろうか。
・・・イヤだ。
激しくイヤだ。
これは悪い夢だ。
頭の中が、真っ白になる。
絢乃は魂が抜けていくのを感じながら、澤田をぽかんと見つめていた。