蜜愛シンドローム ~ Trap of Takumi ~
卓海の言葉に、絢乃は目を丸くした。
欧米では独身女性は彼氏か家族かのエスコートが必要と聞いたことはあるが・・・。
・・・よくわからない。
しかしそうなると、また厄介事の種が一つ増えてしまう。
絢乃はため息をつき、昼間の香織の件を話した。
「・・・ということがあって。だから、会社では距離を置いた方がいいかと」
と言った絢乃だったが。
卓海がうっすらと黒い笑みを浮かべるのを真正面から見、ヒィと背筋を強張らせた。
「それは無理だな。だいたい、会ってるのは昼の社食だけだろうが」
「・・・いや、それが、逆に目立ちすぎてるんじゃないかと・・・」
「じゃあ、お前を第二開発課に異動させるか? そうすりゃ、四六時中一緒にいたってヘンには思われないだろ?」
卓海の言葉に、絢乃はビシッと背筋を強張らせた。
そんなことになったら、一日中卓海にコキ使われてしまう。
もっとも、今は『コキ使われる』の意味合いが少し前とは違ってきているが。
・・・特に家では。
絢乃は慌てて首を振った。