蜜愛シンドローム ~ Trap of Takumi ~
やがてデモが始まる時間となり、二人は会場のプロジェクターに繋がっているケーブルを、ノートパソコンに差し込んだ。
これで、ノートパソコンの画面がそのまま会場のプロジェクターに映ることになる。
橋本さんは控室の上にある会場カメラの映像を見ながら、マイクを手に話し始めた。
「Sehr geehrte Damen und Herren、・・・」
橋本さんはドイツ語で話しながら、ペン先で貿易システムの画面を指し示す。
絢乃は橋本さんに示された通りに、貿易システム上のボタンをクリックしていった。
橋本さんが何て言っているのかはわからないが、言われたとおりに操作するしかない。
二人は緊張のあまり青ざめながら、デモをこなしていった。
───そして、20分後。
デモは無事に終了した。
会場カメラの様子を見ると、なかなか好評だったらしく、拍手が湧き上がっている。
はぁぁ~と肩を下ろした二人だったが。
絢乃の胸ポケットに入れてあった会社携帯がピピッと鳴り、絢乃は慌てて携帯を開いた。