蜜愛シンドローム ~ Trap of Takumi ~
会議の後。
運用課に続く廊下を歩いていた絢乃は、廊下の先に雅人の姿を見つけ、慌てて駆け寄った。
「北條さん!」
「・・・秋月か」
雅人は絢乃を振り返り、見下ろした。
・・・いつもと同じ、冷静で涼やかな眼鏡の奥の瞳。
絢乃はその瞳を見、胸がきゅっと痛むのを感じた。
新入社員としてこの会社に入った時から、絢乃を導き、支えてくれた雅人。
鬼軍曹ではあったが、雅人から教えてもらったことは絢乃の社会人としての基礎になった。
ずっと尊敬してきた上司であり、先輩であり・・・
絢乃はぐっと手を握りしめ、雅人を見上げた。
「あの、・・・聞いていいのかわからないんですけど・・・」
「・・・?」
「その、どうして、突然・・・っ」
と、叫ぶように言った絢乃に。
雅人はその美しい目を細めて、少し笑った。