蜜愛シンドローム ~ Trap of Takumi ~
卓海はその茶色がかった美しい瞳で、じっと絢乃を見つめる。
───その、真剣な瞳。
絢乃は頭の中で必死に考えた。
あのことを、言ってもいいのか・・・・。
自分の体が不感症というわけではなかった、というのは絢乃も既に気付いている。
けれど、あの記憶だけは・・・どうしても・・・。
「・・・言え」
「加納さん・・・」
「言え。お前はオレのものだ。オレはお前の全てを知る権利がある」
───権利って・・・。
絢乃は唖然とした。
けれど、この強引さが・・・なんだか嬉しい。
絢乃は意を決し、口を開いた。
・・・誰にも言ったことがない、あの記憶。
誰にも触れられたことのない、あの傷跡。
一言一言、言葉を選んでゆっくり話す絢乃を、卓海は真剣な目でじっと見つめていた。
そして、全てを話し終わった後。
卓海は絢乃の首の後ろに手を回し、ぐっと抱き寄せた。