蜜愛シンドローム ~ Trap of Takumi ~
「・・・突然というわけではない。前々から決まっていたことだ。ただ、タイミングがいつになるかというだけでな」
「・・・え?」
「ただ・・・確かに、お前や課員達にしてみたら唐突だったかもしれないな。その点については、申し訳なく思っている」
雅人は目を伏せ、言う。
その、いつもと全く変わらない冷静な態度に、絢乃は雅人の中で何かの結論が出ているのだということを知った。
何かは、よく分からないのだが・・・。
既に雅人は納得し、決心し、その道へ進むことを決めている。
であれば、部下として・・・それを、応援したい。
これまで絢乃は、心のどこかで、雅人がこれまで絢乃にしてくれたことに対して恩返しをしたいと思っていた。
けれどもう、その機会は失われてしまった。
であればせめて、雅人がこれから進む道を応援したい。
絢乃は雅人の顔を見上げ、言った。
「あの、北條さん。・・・これまでいろいろと、ありがとうございました。北條さんに教えていただいたこと、ずっと忘れません」