蜜愛シンドローム ~ Trap of Takumi ~




「兄の本性を知った上で付き合おうなんて奇特な女性は絢乃さんくらいですわ。ですから神様も他に赤い糸を結びようがないと言うか、選択肢がそもそもないというか」

「・・・・・」

「運命の赤い糸というと響きはいいですけど。別の言い方をすると、人生をかけたボランティアとも言いますわね。世界平和のための生贄とも」

「・・・・・」


絢乃はあんぐりと口を開けた。

───そう言われてはミもフタもない。

ぽかんとする絢乃に、千尋はくすりと笑って続ける。


「でもまあ、悪いことばかりでもありませんわ。兄の女嫌いは徹底してますから。浮気の心配はまずありませんわ」

「・・・」


それは、確かにそうだろう。

しかも、卓海はネコと鬼の二面性を持っている。

この鬼の本性を知って結婚しようという女はあまりいないだろう。

しかも卓海は極度の女嫌いだ。

浮気の心配がないという点ではいいのかもしれない。

しかし・・・。

唖然とする絢乃の向かいで、卓海がため息をつく。


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