蜜愛シンドローム ~ Trap of Takumi ~
「・・・おい、寒くないか?」
卓海の手がぐいと絢乃の手を引く。
そのまま卓海のコートのポケットに手を強引に突っ込まれ、絢乃はドキッとした。
・・・温かくて大きな手。
初めは鬼だと思っていたけれど・・・
・・・・というか今でも思っているけれど・・・
今はこんなにも、この人が愛しい。
自分がこんな気持ちを卓海に抱くようになるなど、絢乃は想像すらしていなかった。
───けれどもう、離れられない。
自分の心はこの鬼に絡め取られてしまった。
もう、卓海しか見えない・・・。
卓海の手が、絢乃の手を強く握りしめる。
絢乃はその手の温かさを感じながら、握られた手にそっと力を込めた。
[蜜愛シンドローム ~ Trap of Takumi ~ [完]]