蜜愛シンドローム ~ Trap of Takumi ~



絢乃の言葉に、雅人は一瞬、驚いたように眉を上げた。

絢乃は雅人を見上げたまま、続ける。


「北條さんなら、きっとどこへ行っても、人はついてくると思います。北條さんは正しい道を選んで、着実に歩いて行ける人だと、私は思います」

「・・・」

「私たちが北條さんの背中を見て安心していたように・・・。きっと新しい環境でも、北條さんの背中を見て安心する人はたくさんいると思います」


雅人は絢乃の言葉を驚いたように聞いていたが、やがてゆっくりとその目を細め、微笑した。

・・・かすかに影を帯びた、その瞳。

ん?と思った絢乃の前で、雅人はゆっくりと口を開く。


「・・・正しい道かどうかは歩いてみないとわからない。歩いた後に振り返って気付くこともあるだろう。だが・・・」

「・・・?」

「お前にそう言われると、頑張ってみようかという気になる。・・・ありがとう、秋月」


雅人は言い、絢乃の頭にぽんと手を置いた。

───大きくて温かい、その手。


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