蜜愛シンドローム ~ Trap of Takumi ~
その日の夜。
家に帰った絢乃は、卓海が上司になった件を慧に報告した。
慧は絢乃の話を聞いた瞬間、カッと目を見開き、戦慄く声で言った。
「・・・は? あいつが上司?」
「うん。急なことだったから、他に適当な人が見当たらなくて。とりあえずって感じらしいけど・・・」
「なにそれ。ありえなくない? というか何なのお前の会社。そこまで人がいないの?」
憤りのせいか、慧の言葉がいつもより過激になっている。
ヒィと思う絢乃の前で、慧はドンと机を叩き、言った。
「あいつの部下になんてなったら、お前、毎日地獄を彷徨うハメになるよ? カスまで搾り取られて影すら残らないよ?」
「・・・」
なんだかよくわからないが、慧の言わんとしていることは絢乃も理解している。
・・・というより想像できてしまう。
あの鬼が上司になったが最後、コキ使われて摩耗して消滅するだろう。
しかし絢乃はしがない一社員だ。
はぁぁと肩を落とした絢乃に、慧は真剣な顔で言う。