蜜愛シンドローム ~ Trap of Takumi ~
入口をくぐって卓海が入場手続きをした後、二人は浴衣コーナーへと移動した。
ここでは好きな浴衣を選んで着ることができる。
いろいろあるな~と並んだ浴衣を見ていた絢乃の横で、卓海が浴衣を手に取った。
萌葱色の生地に竹の模様が入った、どちらかというとシンプルな浴衣だが、端整な顔立ちの卓海にはこういったシンプルな浴衣の方が似合うだろう。
やはり顔のいい男は自分に何が似合うのかもよく知っているらしい。
・・・こういう面は慧にも見習ってほしい気はする。
などと考えていた絢乃に、卓海はばさっと強引に浴衣を押し付けた。
「お前はこれを着ろ」
「え・・・ええっ!?」
卓海に渡されたのは、濃紺地に紅色や黄色の花の模様が入った、かなり大人っぽい浴衣だった。
はっきり言って、自分ではまず選ばない柄だ。
唖然とした絢乃の手を掴み、卓海はすたすたと歩き出す。
フロントを抜けたところで卓海は絢乃の手を放し、待合所を指差した。
「まずは着替えだ。着替えたらここに来い」
「あ、はい」