蜜愛シンドローム ~ Trap of Takumi ~
どうやら館内は基本的に浴衣で過ごすらしい。
絢乃は更衣室に行き、浴衣に着替え、ロッカーに荷物を入れた。
ロッカーの鍵はブレスレットになっており、付いているキーで店での買い物などもでき、料金は後でまとめて精算するらしい。
・・・なかなかハイテクだ。
絢乃はブレスレットを左手首に付け、待合所へと向かった。
待合所の前には既に卓海の姿がある。
浴衣を着た卓海は、その端整で繊細な面立ちのせいもあってか、どこぞの若旦那という感じでかなり格好いい。
通りかかる女性たちがチラチラ見るのも無理はない。
思わずドキッとした絢乃だったが、卓海の視線がこちらに向いたのに気付き、思わず息を飲んだ。
「・・・っ!」
卓海は驚いたように一瞬目を見開いた後、絢乃の前へと歩み寄ってきた。
絢乃の頭の先から爪先までを見渡し、くすりと笑う。
・・・その、大人の色気に満ちた微笑み。
いつもと同じ笑みなのに、どことなく艶っぽい。
絢乃は吸い込まれるように卓海を見上げた。