蜜愛シンドローム ~ Trap of Takumi ~
─── 一時間後。
絢乃は脱衣所を出、通路に出た。
卓海との待ち合わせ時間までには、あと5分ほどある。
ちょっと周りを見てみようかと思い、絢乃は通路の逆側の方へと歩き出した。
通路の逆側には小さな飲食店が並んでおり、看板には『屋台村』とある。
へー、と思いながら、絢乃はその奥へと歩いて行った。
奥には階段があり、どうやら2階に続いているらしい。
2階には何があるんだろう、と思い階段を上がりかけた絢乃だったが。
ふいに後ろから腕を掴まれ、びくっと足を止めた。
「・・・おい、どこに行くつもりだ、お前」
聞き覚えのあるテノールの声。
振り返った絢乃の目に、浴衣を着た卓海の姿が映る。
風呂上がりのせいかうっすらと頬が上気し、浴衣を着ていることもあってか、とても色っぽい。
浴衣の合わせ目から微かに覗く均整のとれた胸元や鎖骨のラインが、普段見慣れないせいか、妙に男っぽく見える。