蜜愛シンドローム ~ Trap of Takumi ~
あんな優艶な微笑みを間近で見せられたら、まさかその下に鬼の本性が隠れているとは思いもしないだろう。
普通の男が言ったら砂を吐きそうなほどキザなセリフも、この男が言うとクリティカルな武器となる。
・・・恐るべし、鬼。
絢乃は思わず後ずさろうとしたが、その肩をぐっと卓海が掴む。
「おい、やたら動くんじゃねえよ。揺れるだろうが」
「・・・っ・・・」
「そうだ、じっとしてろ。いいな?」
肩に回った腕に力が籠められる。
・・・均等に筋肉が付いた、逞しいその腕。
今の優艶さはカケラもないぶっきらぼうな態度だが、なぜか胸が熱くなる。
絢乃は頬を染め、窓の外に広がる景色に目をやった。